
更新日:2026年5月2日
賃貸物件を借りる際には、「申込」という手続きを行う必要があります。
不動産会社から「申込を入れましょう」「申込が入りました」といった言葉を聞くことがありますが、申込の意味や仕組みを正確に理解している方は意外と多くありません。
申込は単に「部屋を押さえる手続き」ではなく、入居審査を受けるための正式な手続きです。
申込後の流れ・キャンセルの可否・必要な書類・申込金の扱いなどを事前に知っておくことで、不要なトラブルを防ぐことができます。
この記事では、賃貸物件の申込の基本から、申込方法・必要書類・キャンセルのルール・申込金の扱い・先行申込の仕組みまで、不動産仲介の実務目線でわかりやすく解説します。
申込とは
申込とは、管理会社や貸主に対して「この物件に入居したい」という意思を示し、入居審査を受けるための手続きのことです。
申込書の提出またはオンライン申込を行うことで、管理会社・保証会社による入居審査が開始されます。
審査では勤務先・収入状況・入居人数などが確認され、貸主が入居を承諾するかどうかが判断されます。
審査に通過した後に重要事項説明を受け、賃貸借契約書に署名・捺印することで、正式に契約が成立します。
申込から契約・入居までの流れ
申込後の一般的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ①申込 | 申込書・必要書類を提出 | 当日〜1日 |
| ②入居審査 | 保証会社・管理会社・貸主による審査 | 2〜7日程度 |
| ③重要事項説明 | 宅地建物取引士から契約内容の説明を受ける | 審査通過後 |
| ④契約手続き | 契約書への署名・捺印、初期費用の支払い | 重説後 |
| ⑤鍵の引き渡し・入居 | 契約開始日から入居可能 | 契約開始日 |
申込が完了すると入居審査が開始されます。
一般的にはまず保証会社による審査が行われ、その後に管理会社・貸主による最終確認が行われます。
審査通過後に重要事項説明を受け、問題がなければ署名・捺印と初期費用の支払いへ進みます。
申込方法
賃貸物件の申込方法は、物件や管理会社によって異なります。
以前は不動産会社の店舗で申込書に記入して提出する方法が一般的でしたが、近年ではオンライン申込が主流になっています。
実務の感覚では、現在は申込のおよそ8割程度がオンラインで行われている印象です。
オンライン申込
専用の申込フォームに必要事項を入力し、身分証明書などの書類を画像でアップロードして提出する方法です。
不動産会社へ来店する必要がなく、内見後に一度持ち帰って検討し、自宅から落ち着いて申込を行うことができます。
必須項目の入力と書類のアップロードが完了した時点で申込が成立し、審査が開始されます。
来店して申込
不動産会社の店舗で申込書に直接記入し、身分証明書などとあわせて提出する方法です。
担当者に確認しながら記入できるため、書類の不備が生じにくいというメリットがあります。
申込に必要な情報
申込に必要な情報は物件・管理会社によって多少異なりますが、一般的には次のような情報の提出を求められます。
申込者本人の情報
- 氏名・住所・生年月日・国籍
- 携帯番号・メールアドレス
- 転居理由・現住居の種類(賃貸の場合は現家賃)
勤務先情報
転職・転勤の場合は転職後・転勤後の情報を、学生の場合は通学先情報を記入します。
- 雇用形態・勤務先名・本社所在地・電話番号
- 設立年月・資本金・従業員数・業種
- 実際の勤務先住所・年収
同居者情報
同居者がいる場合は、申込時に同居者の情報も必要です。
- 氏名・生年月日・続柄
- 勤務先または通学先・携帯電話番号
緊急連絡先情報
原則として親族が求められます。
- 氏名・住所・携帯番号・続柄・生年月日
連帯保証人情報
近年の賃貸契約では保証会社を利用するケースが多く、連帯保証人を求められることは以前より少なくなっています。
ただし物件・貸主の条件によっては設定が必要な場合もあります。
その場合は氏名・住所・生年月日・携帯電話番号・メールアドレス・年収・勤務先情報の提出が求められます。
申込に必要な書類
申込時には本人確認・就業確認・収入確認のための書類提出が必要です。
オンライン申込の場合は画像アップロードまたはメール送付、来店申込の場合はその場で確認・コピーする形が一般的です。
身分証明書(必須)
次のいずれかを提出します。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
どちらも持っていない場合はパスポートで対応できるケースもありますが、保証会社によってはパスポートのみでは受付できない場合もあります。
外国籍の方は在留カード・特別永住者証明書・パスポートの提出が求められます。
就業証明書類
実務上、8割程度の物件で何らかの就業証明書類の提出が必要になります。
在職中の場合
健康保険の資格確認書が主に求められます(マイナ保険証への移行に伴い、以前の健康保険証から切り替わっています)。
資格確認書に勤務先名が記載されていない場合は、源泉徴収票・給与明細・雇用契約書などの追加提出を求められることがあります。
個人事業主(自営業)の場合
- 開業届
- 確定申告書の控え
- 取引を確認できる通帳のコピー
- ウェブサイトのURL(ある場合)
転職・就職直後の場合
まだ健康保険の資格確認書や給与明細が発行されていないため、次のような書類が求められます。
- 内定通知書
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
紙の書類だけでなくPDFデータでも提出できるのが一般的です。
収入証明書類
実務の感覚では、およそ半数程度の物件で収入証明書類の提出が必要になります。
- 源泉徴収票(会社員)
- 直近3か月分の給与明細(会社員)
- 確定申告書類(個人事業主)
- 雇用契約書・労働条件通知書(転職予定の場合)
保証会社・管理会社によっては、追加で通帳のコピーの提出を求められることもあります。
申込者以外の必要書類
同居者
本人確認のために運転免許証またはマイナンバーカードの提出を求められることがあります。
連帯保証人
身分証明書のほか、就業証明書類・収入証明書類の提出が求められることが一般的です。
なお、緊急連絡先については書類の提出を求められるケースはほとんどありません。
申込金(預かり金)について
不動産会社によっては、申込時に「申込金」「預かり金」などの名目で1万円〜家賃1か月分程度の金銭を預けるよう求められるケースがあります。
この申込金は、契約締結まで不動産会社が一時的に預かるものです。
キャンセルとなった場合は全額返還されるのが原則であり、不動産会社が申込金・預かり金の返還を拒否することは宅地建物取引業法施行規則で禁止されています。
申込金を支払う際は「預かり証」を必ず発行してもらい、「預かり金」と記載されていることを確認してください。
「手付金」と記載されていた場合は、支払ったお金の性質が変わり、返金されない可能性があります。
返金を拒否された場合は、都道府県庁の不動産相談窓口または全国宅地建物取引業協会に相談してください。
なお、マチラボでは申込時に申込金や手付金をお預かりすることはありません。
申込後にキャンセルできるか
申込後であっても、賃貸借契約書に署名・捺印をする前であれば、原則としてキャンセルは可能です。
申込の段階ではまだ賃貸借契約は成立していないためです。
キャンセルできるタイミング
| タイミング | キャンセルの可否 | 費用の発生 |
|---|---|---|
| 申込書提出後・審査前 | 可能 | 原則なし |
| 審査中 | 可能 | 原則なし |
| 審査通過後・重要事項説明前 | 可能 | 原則なし |
| 重要事項説明後・署名前 | 可能 | 原則なし |
| 契約書に署名・捺印した後 | 不可(解約扱い) | 違約金が発生する可能性あり |
「諾成契約」に注意
法律上、賃貸借契約は「諾成契約」といって、双方の合意があれば口頭だけでも契約が成立するとされています。
そのため、「審査が通ったので入居します」と口頭で伝えた時点を契約成立とみなす不動産会社・管理会社も存在します。
こうした解釈によって、審査通過後にキャンセルしようとすると「契約は成立している」と主張されるケースがあります。
トラブルを避けるためにも、申込時に「契約が成立するのはどのタイミングか」を不動産会社に確認しておくことをおすすめします。
キャンセルした場合の注意点
申込後のキャンセルは、管理会社や貸主にとって募集を一時停止した期間の機会損失となります。
自己都合によるキャンセルが続くと、次のようなリスクが生じる可能性があります。
- 同じ物件への再申込を受け付けてもらえない
- 同じ管理会社・貸主が募集している別の物件でも申込を断られる場合がある
やむを得ない事情でキャンセルせざるを得ない場合は、事情をきちんと説明し、できるだけ早めに不動産会社に連絡することが重要です。
時間が経つほど関係者への影響が大きくなります。
部屋の仮押さえはできるか
現在の賃貸では、原則として「仮押さえ」という制度はありません。
実際に部屋を押さえるには申込を行うことになります。
管理会社や貸主は、申込が入った時点で入居意思があるものとして扱い、入居審査を開始します。
「とりあえず押さえておく」という感覚で申込を行うと、管理会社・貸主から「申込は入居を前提とした正式な手続き」として扱われます。
申込は、物件の条件・初期費用・契約内容を十分に確認し、入居する意思がある程度固まった段階で行うべき手続きです。
十分な説明をせずに申込を急かす不動産会社には注意してください。
先行申込とは
先行申込とは、まだ内見ができない状態(前の入居者が退去前など)の物件に対して、内見の前に申込を行う方法です。
先行申込をすることで、内見が可能になった時点で優先的に確認する権利を確保でき、事実上の仮押さえに近い状態を作ることができます。
先行申込は原則として1件のみ行えます。
複数の物件に並行して先行申込を行うことは、管理会社・貸主からの信頼に影響するためマナーとして避けるべきとされています。
先行申込と似た言葉に「先行契約」があります。
先行契約は内見前に賃貸借契約まで締結してしまうものであり、その後に内見をして気に入らなくてもキャンセルはできません(解約扱いになります)。
先行申込と先行契約は意味が大きく異なるため、混同しないよう注意が必要です。
申込後に確認の連絡はあるか
申込後、保証会社や管理会社から申込者本人へ確認の連絡が入ることがあります。
勤務先・年収・転居理由などについて簡単な確認をされるケースが多く、保証会社の場合は主に電話で行われます。
ただし、すべての物件で必ず連絡があるわけではなく、保証会社・管理会社の方針によって対応は異なります。
電話に出られない場合、審査が進まないことがあるため、申込後は知らない番号からの着信にも可能な限り対応しておくと安心です。
また、緊急連絡先や連帯保証人に確認の連絡が入る場合もあります。
なお、最近では勤務先への在籍確認の連絡は行われないケースが一般的になっています。
申込には順番がある
賃貸物件では、申込が複数入った場合に「1番手」「2番手」といった順番がつきます。
先に申込を完了した人から順番に審査が進められるのが基本です。
通常は1番手の審査が優先して行われ、通過すればそのまま契約へ進みます。
1番手が否決またはキャンセルとなった場合に2番手の審査が開始されます。
オンライン申込では、すべての必須項目の入力と書類のアップロードが完了した時点で申込が成立します。
入力途中の状態は申込として扱われないため、1番手を確保したい場合は速やかに申込を完了することが重要です。
どうしても入居したい物件であれば、2番手として申込を入れておく価値はあります。
よくある質問
申込と契約の違いは何ですか
申込は「この物件に入居したい」という意思を示し、入居審査を受けるための手続きです。
この段階ではまだ賃貸借契約は成立していません。
入居審査に通過した後、重要事項説明を受け、賃貸借契約書に署名・捺印することで正式に契約が成立します。
申込から審査結果が出るまでどれくらいかかりますか
物件・保証会社によって異なりますが、一般的には2〜10日程度で結果が出ることが多いです。
繁忙期・追加書類が必要な場合・オーナー確認が必要な場合は、さらに数日かかることもあります。
申込後にキャンセル料はかかりますか
賃貸借契約書に署名・捺印をする前であれば、原則としてキャンセル料は発生しません。
ただし物件・管理会社によっては、申込時に自己都合キャンセルの場合の費用負担に関する覚書への署名を求められるケースがあります。
その場合はキャンセル時に費用が発生する可能性があるため、申込前に確認しておくことが重要です。
申込金は返ってきますか
契約前にキャンセルした場合、申込金は全額返還されるのが原則です。
不動産会社が返還を拒否することは宅地建物取引業法施行規則で禁止されています。
支払いを求められた場合は必ず「預かり証」を受け取り、「預かり金」と記載されていることを確認してください。
2番手申込でも契約できますか
可能性はあります。
1番手の申込者が審査に通らなかった場合や申込をキャンセルした場合は、2番手の申込者が繰り上がりで審査されます。
ただし1番手の審査が通過した場合はそのまま契約へ進むため、2番手が契約できない可能性のほうが高いのも事実です。
申込後に家賃交渉はできますか
家賃や初期費用などの条件交渉は、申込と同時に行うのが一般的です。
申込が完了し審査に入った段階では、交渉を受けてもらえない可能性が高くなります。
交渉を希望する場合は申込をするタイミングで不動産会社に相談してください。
なお、交渉は入居希望者が直接行うのではなく、仲介している不動産会社を通して行います。
まとめ
賃貸物件の申込は、入居の意思を示し入居審査を受けるための手続きです。
申込の段階ではまだ賃貸借契約は成立しておらず、審査通過・重要事項説明・署名捺印を経て正式に契約が成立します。
- 申込はオンラインが主流。全必須項目と書類の提出が完了した時点で申込成立
- 必要書類は身分証明書・就業証明・収入証明が基本。状況によって異なる
- 申込金(預かり金)はキャンセル時に全額返還が原則。返還拒否は法律違反
- 契約書への署名・捺印をする前であれば原則キャンセル可能。ただし「諾成契約」の解釈には注意
- 「仮押さえ」という制度はない。申込は入居を前提とした正式な手続き
- 先行申込と先行契約は別物。先行契約後のキャンセルは解約扱いになる
- 申込は1番手・2番手の順番で審査が進む。早く完了した申込が優先される
- 家賃交渉は申込と同時に行う必要がある
