同じエリア・築年数・広さの条件で検索したのに、1件だけ明らかに家賃が安い物件を見つけた——そんな経験はありませんか。「掘り出し物かも」と思う前に、まず立ち止まって考えてほしいことがあります。貸主(オーナー)はできるだけ高く貸したいと思っています。にもかかわらず安くしているということは、安くしなければ入居者が集まらない理由が必ずあります。このページでは、家賃が相場より極端に安い物件に潜む理由と、入居前に確認すべきポイントを解説します。
最終更新日:2026年5月12日

「相場より安い」の目安はどのくらい?
同じエリア・同程度の築年数・同程度の広さの物件と比較して、家賃が10%以上安い場合は「何かある可能性がある」と考えて調べる価値があります。20〜30%以上の差がある場合は、事故物件や建物・環境面での重大なマイナス要因を疑うべきです。
相場比 〜10%安:立地・設備などのマイナス面がある可能性。内容を確認すれば納得できることも多い
相場比 10〜20%安:環境・建物・入居者トラブルなど何らかの問題がある可能性が高い
相場比 20〜30%以上安:事故物件・定期借家・大規模な問題がある可能性を強く疑うべき
ただしこれはあくまで目安であり、安さの幅だけで判断するのは禁物です。重要なのは「なぜ安いのか」を具体的に把握することです。
家賃が相場より安い理由 8パターン
① おとり物件の可能性
存在しない、あるいは実際には貸す気のない物件を、集客目的で掲載しているケースです。「問い合わせたらすでに決まっていた」「現地集合を拒否される」「マンション名を教えてもらえない」といった対応は要注意のサインです。
特に相場と比べて条件が良すぎる物件ほどおとり物件として使われやすい傾向があります。問い合わせ後に「ちょうど決まった」と言われ、別の物件を勧められるパターンが典型的です。
当社にも、お客様から「この物件はまだ空いていますか?」と、相場よりかなり安い物件についてお問い合わせをいただくことがあります。
しかし、実際に確認してみると、すでに募集が終了している物件であることがほとんどです。
おとり物件は宅地建物取引業法32条および不動産の表示に関する公正競争規約で禁止されています。ただし実際には摘発が難しく、完全になくなっていないのが現状です。「なぜこんなに安いのか」と感じたときは、まず物件の実在確認から始めましょう。
おとり物件とは?賃貸で使われる手法・見分け方・注意点を不動産会社が解説
② 事故物件(心理的瑕疵物件)
室内で過去に死亡事故・事件・自殺などがあった物件は「心理的瑕疵物件」(いわゆる事故物件)として、相場より大幅に安く設定される場合があります。
なお、仲介会社には告知義務があるため、事故物件を知らずに契約させることは原則できません。物件情報の備考欄などに「告知事項あり」と記載がある場合は、必ず内容を確認してください。また極端に安い物件では、自分から「告知事項はありますか」と仲介担当者に聞くことを推奨します。
国土交通省は2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しており、告知が必要なケースと不要なケースの目安が示されています。ただし「隣室での事故」「数年前の事故で次の入居者が一定期間住んだ後の物件」などについては告知義務が発生しないケースもあります。
③ 近隣・建物内のトラブル(騒音・異臭・入居者問題)
近隣住民とのトラブル、騒音、異臭、建物内に問題のある入居者がいるなどの理由で大量退去が起き、空室が続いている物件は家賃を大幅に下げて募集することがあります。
こうしたケースは告知義務の対象になる場合とならない場合があり、募集広告を見ただけでは判断できません。内覧時に共用部の状態・掲示板の内容・住民の様子などを確認することが有効です。また、内覧の時間帯を変えて複数回訪問することで、騒音の実態が把握しやすくなります。
④ 清掃・補修が行われていない「現状渡し」
通常、退去後は原状回復工事(クリーニング・クロス張替えなど)を行ってから次の入居者を募集しますが、コスト削減のために清掃や補修を行わない状態で入居させる「現状渡し」の条件で家賃を安く設定するケースがあります。
この場合、壁紙の汚れ・傷・においが残っていたり、設備が老朽化したままであることがあります。「現状渡し」「現況のまま」「クリーニングなし」といった表記や口頭説明がある場合は、入居前に状態をしっかり確認し、気になる点は契約前に修繕を交渉することが重要です。
賃貸のクリーニング費用とは?払う必要はある?相場・特約・注意点を解説
⑤ キャンペーン賃料(期間限定の値下げ)を表示している
「入居から3ヶ月間は家賃半額」「最初の6ヶ月は○○円」といった期間限定の賃料キャンペーンを実施している物件があります。
ここで重要なのは広告表示のルールです。ポータルサイトの賃料欄には、キャンペーン適用後ではなく、本来の(キャンペーン終了後の)賃料を表示しなければならないというルールが定められています(公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会の見解)。
しかし実際には、このルールを守らずにキャンペーン後の安い賃料を賃料欄に掲載してしまっているケースが見受けられます。見た目の賃料が安くても、数ヶ月後には大幅に上がる可能性があるため、備考欄や特記事項を必ず確認してください。
正しくは「賃料欄:本来の賃料(例:10万円)」を表示し、備考欄に「○月○日までにご契約の方は当初3ヶ月間の賃料を7万円とします」と記載する必要があります。賃料欄が安くても備考欄を確認しないと、キャンペーン終了後に家賃が大幅に上がることに気づかないまま契約してしまうリスクがあります。
⑥ 周辺環境に問題がある(嫌悪施設・騒音・治安)
物件の外観や設備は普通でも、周辺環境に問題があるために家賃を下げているケースです。代表的な例として以下のものがあります。
- 線路・幹線道路沿いで騒音がひどい
- 墓地・火葬場・廃棄物処理施設が近接している
- 歓楽街・風俗街の近くにある
- 異臭がする人工河川・排水路が近くにある
これらは内覧時には気づきにくいことがあります。Googleマップの周辺確認、複数の時間帯での訪問、地域の住民への聞き込みなどが有効です。
線路沿い・幹線道路沿いの賃貸はうるさい?外からの騒音リスクと物件選びの注意点
⑦ 建物・設備に問題がある
見た目はリフォームされていても、構造や設備に問題を抱えているケースがあります。
- 旧耐震基準(1981年6月以前に建築確認)の建物で耐震性に不安がある
- 外観・内装はリフォーム済みでも上下水道の配管が老朽化している
- エアコンや給湯器などの設備が故障しているが交換予算がない
- 洗濯機置き場がない・ベランダや屋外に設置
- 1階・半地下で湿気・カビが慢性的に発生している
⑧ 定期借家契約・立退き予定物件
通常の賃貸(普通借家契約)は更新によって住み続けることができますが、定期借家契約は契約期間が満了すると更新できず退去が必要になります。再開発や建替え予定のある物件でも同様です。
家賃が安くても「2年後には必ず出なければならない」という制約がある物件は、引越し費用・手間が再び発生することを計算に入れる必要があります。物件情報の「契約種別」欄を必ず確認してください。
「本当にその条件で入居できる物件」も存在する
安い理由がすべてネガティブなものとは限りません。稀ではありますが、貸主側の事情や空室長期化によって本当にお得な条件で入居できる物件も存在します。
- 長期間空室が続いている:強気の賃料設定が続いたが入居者が集まらず、相場より低く設定し直した
- 近隣に新築物件が多く建ち競争が激化:古い物件を早期に成約させるため値下げした
- 個人貸主が早期成約を優先:空室期間が長くなるよりも収入を確保したい
- 設備や立地は許容できるマイナスのみ:駅から少し遠い・日当たりがやや悪いなど、人によっては気にならない理由で安い
大切なのは「安いからダメ」ではなく、「なぜ安いのかを把握した上で、自分にとって許容できるかどうか判断する」ことです。
安い物件を内覧する前にやること
ポータルサイトの情報を精査する
物件情報を見る際は、賃料欄だけでなく備考欄・特記事項・告知事項欄を必ず確認してください。「告知事項あり」「現状渡し」「定期借家」「キャンペーン賃料」「入居期限あり」といった記載が見逃されていることがあります。
また、同じ物件が他のポータルサイト(SUUMO・HOME’S・アットホーム)にも掲載されているか確認し、賃料に差がないかをチェックすることも有効です。
Googleマップで周辺を調べる
内覧前に、物件の住所をGoogleマップで検索し、周辺の施設・地形・道路状況を確認しましょう。ストリートビューを使えば、内覧当日に行く前から周辺環境をある程度把握できます。
仲介担当者に「なぜ安いのか」を直接聞く
安い理由は、聞かなければ教えてもらえないことがほとんどです。遠慮せず「同じエリアの物件と比べて家賃が安い理由を教えてください」と直接聞いてみましょう。経験豊富な担当者であれば、おおよその理由を把握しているはずです。明確な答えが返ってこない場合は、担当者自身も把握できていない状況と考えられます。
内覧時に必ず確認すること
- 室内の臭い(カビ・タバコ・前入居者由来の異臭)の有無
- 壁・床・天井のひび割れ・染み・傷の状態
- 水回り(キッチン・浴室・洗面・トイレ)の清掃状態
- 採光・通風の状態
- 共用部(廊下・エントランス・ゴミ置き場)の清潔感と管理状態
- 掲示板の内容(住民トラブルに関する注意書きがないか)
- 周辺道路の騒音(内覧は平日・休日の異なる時間帯で確認が理想)
よくある質問
まとめ:安い物件と向き合うための7つのポイント
- 貸主はできれば高く貸したいので、安いのには必ず理由がある。「掘り出し物」と即断しない
- 相場比10%以上安い場合は理由の確認が必要。20〜30%以上の差は重大な問題を疑うべき
- おとり物件・事故物件・近隣トラブル・現状渡し・キャンペーン賃料など安い理由は多岐にわたる
- キャンペーン賃料はルール上、本来の賃料を賃料欄に表示するべきだが、守られていないケースも多い
- 告知事項の有無・定期借家かどうか・現状渡しかどうかは契約前に必ず確認する
- 内覧時は臭い・状態・共用部・騒音・掲示板まで確認し、可能であれば複数の時間帯に訪問する
- 稀に本当にお得な物件もある。「なぜ安いか」を把握した上で自分が許容できるかで判断する
