賃貸物件の「共用部分」とは、廊下・階段・エントランス・ベランダなど、入居者全員が共同で使う場所のことです。自分の部屋(専有部分)とは管理のルールが異なり、自由に使えるスペースではありません。
「管理費を払っているのに共用部分が汚い」「廊下に私物を置いてよいのか」「共用部分が壊れたら誰が直すのか」。こうした疑問や不満は入居後によく耳にします。この記事では、共用部分の定義と専有部分との違い、管理の責任の所在、入居者として知っておくべきルールをわかりやすく解説します。

最終更新日:2026年05月25日
共用部分とは何か。専有部分との違い
賃貸マンションや賃貸アパートの空間は、大きく「専有部分」と「共用部分」に分かれます。
専有部分とは
専有部分とは、入居者が契約によって排他的に使用できる空間のことです。玄関ドアの内側から始まる居室・キッチン・浴室・トイレなどが該当します。賃貸契約で借りているのは、基本的にこの専有部分です。
設備の不具合や修繕が必要な場合は、物件の管理会社(または貸主)に連絡することになります。
共用部分とは
共用部分とは、そのマンション・アパートの入居者全員が共同で使う場所や設備のことです。主な共用部分は以下の通りです。
- エントランス・ロビー・オートロック設備
- 廊下・階段・エレベーター
- 駐輪場・駐車場
- ゴミ置き場
- 宅配ボックス
- 管理人室・集会室
- 外壁・屋上・建物の構造部分
- 共用の給排水管・電気設備・インターフォン
専有部分は「自分だけが使う空間」、共用部分は「みんなで使う空間」です。共用部分は入居者みんなの場所であるため、特定の入居者が自由に占有したり、改造したりすることはできません。
ベランダ・バルコニーも共用部分
意外と知られていないのが、ベランダ・バルコニーは共用部分に分類されるという点です。普段は各住戸の入居者が専用で使っていますが、法的・管理規約上は共用部分です。
その理由は防災にあります。ベランダは火災などの緊急時に隣の住戸へ避難するための経路として設計されており、避難経路としての機能を確保することが求められています。そのため、大型の荷物・家具・プランター・物干し台などをベランダに置いて避難経路をふさぐことは、管理規約違反になる場合があります。
ベランダの隔て板(パーテーション)は、緊急時に蹴破って隣の住戸へ避難するためのものです。前に物を積み重ねていると、いざというときに避難できません。ベランダ周辺には大きな荷物を置かないよう注意してください。
廊下・玄関前への私物放置は禁止
廊下や玄関前に自転車・ベビーカー・傘立て・観葉植物などを置いている入居者を見かけることがありますが、これは原則として禁止です。
廊下は避難経路であり、通路としての幅を確保することが建築基準法や消防法上も求められています。私物が置かれると他の入居者の通行を妨げるだけでなく、緊急時の避難を妨げる危険があります。管理会社から撤去を求められることがあり、繰り返す場合は契約上の問題に発展するケースもあります。
「少しの間だから」「場所を取らないから」という判断は通用しません。廊下・玄関前・階段は私物を置く場所ではないと認識しておきましょう。
共用部分の管理は誰がするのか
「管理費・共益費を払っているのに廊下が汚い」「エレベーターが壊れているのに直らない」。入居者からこうした声を聞くことがあります。共用部分の管理は、誰の責任で行われるのかを整理しておくことが重要です。
原則は貸主・管理会社の管理対象
共用部分の清掃・維持管理・設備修繕は、原則として貸主(オーナー)または管理会社の責任で行われます。エントランスの清掃・共用廊下の照明交換・エレベーターの点検・ゴミ置き場の整備などがこれにあたります。
不具合や汚れが気になる場合は、管理会社に連絡することが適切です。「誰かがやるだろう」と放置するのではなく、気づいた入居者が報告することで早期対応につながります。
管理費・共益費は「共用部分の専用使用料」ではない
毎月支払っている管理費・共益費は、共用部分の維持・清掃・共用電灯・設備管理などに充てられる費用です。しかし、管理費を払っているからといって、共用部分を自由に使えるわけではありません。
管理費・共益費はあくまで「共用部分を適切に維持するための費用の分担」であり、特定の入居者がその場所を占有したり、自由に改造したりする権利を与えるものではありません。
共用部分の清掃や設備維持の状況に不満がある場合は、管理会社への問い合わせが正しい対応です。物件選びの段階では、共用部分の清潔さや管理状態を内見時に確認しておくことをおすすめします。管理の行き届いた物件かどうかは、共用部分を見れば概ねわかります。
分譲賃貸の場合は管理会社が2つある
分譲マンションは、各住戸の所有者(区分所有者)全員で組織する管理組合が建物全体を管理する仕組みになっています。実際の管理業務はマンション管理会社に委託しているケースがほとんどです。エントランスの清掃、エレベーターの点検、共用廊下の照明管理といった共用部分の維持はこのマンション管理会社が担います。
分譲マンションをオーナーが賃貸に出している「分譲賃貸」に住む場合、入居者が日常的にやり取りする賃貸管理会社(部屋の設備修繕・入退去手続きを担当)とは別に、このマンション管理会社が存在します。つまり、専有部分(部屋の中)と共用部分とで、対応する管理会社が異なるのが分譲賃貸の一般的な形です。廊下の照明が切れている、エントランスのオートロックが故障しているといった場合は、賃貸管理会社ではなくマンション管理会社への連絡が必要になることがあります。
通常の賃貸マンション(オーナーが賃貸用に建てた物件)でも、建物全体の管理会社と入居者対応の管理会社が分かれているケースがあります。何か問題が起きた場合は、まず賃貸借契約書に記載されている管理会社に連絡し、窓口を確認するのが確実です。
共用部分が故障・破損した場合の責任
「共用部分が壊れたら自分に請求されるのか」という不安を持つ入居者は少なくありません。責任の所在は、壊れた原因によって異なります。
通常使用・経年劣化による不具合は貸主・管理会社の対応
廊下の照明が寿命で切れた、エレベーターが経年劣化で不具合を起こした、共用の給排水管が老朽化で詰まったといった場合は、通常使用・経年劣化による不具合として、貸主・管理会社側が対応・修繕するのが原則です。入居者に費用が請求されることはありません。
入居者・来訪者の行為が原因の場合は別
一方で、入居者本人や来訪者が故意または過失によって共用部分を破損させた場合は、修理費用を請求される可能性があります。引越し作業中に廊下の壁に傷をつけた、自転車を倒して共用設備を壊したといったケースがこれにあたります。
作業や搬入時は特に注意が必要です。管理会社や建物によっては養生(壁・床の保護)を義務付けていることもあります。
共用部分の不具合を発見した際は、自分が壊したものでなくても管理会社に報告することをおすすめします。放置すると悪化する場合があり、後から「入居者が破損させた」と誤解されるリスクも避けられます。
共用部分でトラブルになりやすい行為
共用部分に関するトラブルは、悪意よりも「これくらいなら大丈夫」という感覚から起きることがほとんどです。以下の行為は他の入居者との摩擦や管理会社からの注意につながりやすいため、注意してください。
| 行為 | 問題になる理由 |
|---|---|
| 廊下・階段への私物放置 | 避難経路の妨害、他の入居者の通行の妨げ。管理規約違反になることが多い。 |
| ベランダの避難経路をふさぐ | 緊急時に隣戸へ避難できなくなる。消防法・管理規約違反のリスクがある。 |
| ゴミを指定日・指定場所以外に出す | 回収されず放置され、悪臭・害虫の原因になる。近隣トラブルの最多原因のひとつ。 |
| 共用部分での喫煙 | 多くの物件で共用部分は全面禁煙。臭いや煙が他の入居者の迷惑になる。 |
| 共用部分での騒音・大声 | 廊下・駐輪場・エントランスでの会話や電話は思った以上に響く。 |
| 駐輪場・駐車場の無断使用 | 契約していない区画を使うことは他の入居者の権利を侵害する。 |
| 宅配ボックスの長期占有 | 他の入居者が使えなくなる。荷物は速やかに取り出すのがマナー。 |
| 共用部分の無断装飾・改造 | 玄関前の飾り付けや照明の取り付けなど、管理会社の許可なく行うことは禁止。 |
| 掲示物の無断貼り付け | 掲示板以外への貼り付けは原則不可。住民への連絡は管理会社を通じて行う。 |
| ペットを共用部分で放す | リードなしでの歩行・排泄は他の入居者とのトラブルの原因になる。 |
上記の行為のほとんどは、「少しくらいなら」「ちょっとの間だから」という感覚から始まります。しかし共用部分は全員の場所です。自分が気になると感じる行為は、他の入居者も同じように感じています。
よくある質問
まとめ
- 共用部分とは廊下・階段・エントランス・ベランダなど入居者全員が共同で使う場所。自由に占有できる場所ではない
- ベランダ・バルコニーも共用部分。防災上の避難経路として機能するため、避難経路をふさぐ使い方は禁止
- 廊下・玄関前への私物放置は原則禁止。自転車・観葉植物・傘立てであっても管理規約違反になることがある
- 共用部分の清掃・維持管理は貸主・管理会社の責任。不具合は管理会社に連絡する
- 管理費・共益費は共用部分の維持費用の分担であり、共用部分の専用使用料ではない
- 分譲賃貸では専有部分と共用部分の管理会社が異なる場合がほとんど。問い合わせ先を確認しておく
- 入居者や来訪者が故意・過失で共用部分を破損した場合は修繕費を請求されることがある
- 部屋探しの段階で、共用部分の管理状態を内見時に確認しておくとトラブルを防ぎやすい
